羽根屋 煌火(きらび)生原酒
「生酒」をフラッグシップ商品として取り扱い、四季を通じて醸造している蔵元は、決して多くはないでしょう。
その数少ない一つが「羽根屋」の屋号をもつ富美菊酒造です。
海外のコンクールでも多数の受賞歴をもつ蔵元で、「生」ならではのクオリティを一年中味わってほしいというこだわりから、四季醸造を続けています。
日本酒の大半は60℃ほどの加熱処理「火入れ」によって品質を落ち着かせていますが、「生酒」はその「火入れ」を一度もしていないため、冷やして飲めば、搾りたてさながらのフレッシュな味と香り。
秋から冬にかけて日本酒の製造は最盛期を迎え、富美菊酒造もこの時期は多めに仕込みますが、フラッグシップ商品である「煌火(きらび)」は通年での販売にこだわり、年4回仕込んでいます。
富美菊酒造の創業は、大正5年(1916年)と、富山市で酒造りを重ねて100年を超えています。
歴史と伝統を継承しつつも変革と挑戦の手を緩めない姿勢が、ブランド力を高める大きな原動力。
羽根敬喜さんが代表者となってからは、「品評会用と販売用を分けない」という常識破りのポリシーを打ち立てました。
販売するすべての商品を、品評会に出すときと同じ、手間暇をかけた製法で仕込むというものです。
コスト面で厳しいことから社内からも抵抗が強かったといいます。
それでも羽根さんの強い思いは揺るぎませんでした。
「一般の方や、あまり日本酒に馴染みのない方が飲んだときに、いい印象が残るようにしたい」
ネーミング・ラベルのデザインも、納得いくまで検討。
その成果は、マーケットの評価となって羽根さんを勇気づけることになりました。
「何をおすすめしていいかわからないときは、羽根屋さんをおすすめすれば間違いない」という、日本酒を取り扱う店から寄せられる声は、羽根さんの果敢な挑戦に大きな意味があったことを裏付けています。
また「日本酒は生き物で、あくまでも主役は、原料と微生物。
人はお酒になるお手伝いをしているだけ」という観点から、蔵人を採用する際の重要なファクターは「多様な人材」。
新卒採用に力を入れつつ、80代の職人にも身体が続く限り嘱託として加わってもらい、多様なみんなが力を合わせ、心を一つにして取り組んでいます。
多様な人材がはたらく環境づくりに、会社が積極的なのです。
世界でもっとも大きな影響力をもつとされるワインのコンテスト「インターナショナル・ワイン・チャレンジ2020」では、吟醸酒部門のゴールドメダルを受賞。
「世界に認められることは、日本酒のおいしさをよりわかりやすくアピールする指標となりえます。今後も海外のコンテストで受賞し続けることが、日本酒自体のブランディングになるのでは。それによって国内でも日本酒を今以上に飲んでもらい、再評価につなげたい」と羽根さん。
日本酒という素晴らしい文化が生き残っていることを広め、日本の文化・伝統にスポットを当てる手段として、今後も作り続けていきたいと。
日本酒の未来を担うのは、こうした蔵元の挑戦なのでしょう。
写真提供:富美菊酒造株式会社様
代表者 羽根敬喜
富美菊酒造株式会社 富山県富山市百塚134-3
☎076-441-9594 http://fumigiku.co.jp/