セトイチ風が吹いたら セトイチいざ セトイチはるばる
足柄山の山奥に、ふるーい、ふるーい屋敷がありました。
そしてその瀬戸屋敷のすぐそばには、壊れかけて40年近く閉じていた酒蔵。
これを3年余りかけて再生したのが、蔵元の森隆信さんです。
仕込んだ日本酒を世界的なコンテストに出品したところ、名だたる賞を総なめに。
イギリスで開催される世界最大規模の酒類コンペティション「インターナショナル・ワイン・チャレンジ」、フランスで開催される日本酒コンクール「Kura Master」で受賞したことから、瀬戸酒造店の名は広く轟き渡ることになりました。
森さんはもともと、橋を設計していた人です。
森さんを突き動かしたのは「この酒蔵を、どうしても再生したい」という強い強い思いでした。
そして瀬戸酒造の蔵人は、森さんの情熱に感じ入り、「手伝いたい」と言って集まってきた人がほとんど。
他の酒蔵ではありえないような創業エピソードが尽きないなか、「杜氏をハローワークに探しに行った」というのも嘘みたいな本当の話です。
酒蔵までの道のりは、見事な田園風景。
酒蔵そのもののつくりは新しく、必要なもののみ少量を備えています。
元の蔵酵母も残しつつ、この地への思いを込めて使っているのが紫陽花酵母です。
というのも紫陽花は酒蔵のある開成町のシンボル。
田んぼのあぜ道に沿ってたくさんの紫陽花が植えられており、開成町の紫陽花の花から抽出した酵母を使って、開成町ならではの日本酒を仕込んでいるというわけです。
瀬戸酒造店の仕込むお酒は大きく3タイプ。そのどれもが妖艶な魅力を隠し持っています。
一番人気のブランドは「セトイチ」。
「セトイチ」のお酒は、飲むシチュエーションを考えながらつけたという、不思議なネーミングばかりです。
「風が吹いたら」
「いざ」
「はるばる」
お酒そのものより、飲む人の気持ちを表現しています。
ラベルをよく見ると、満月の中心が、ぽっかりとタテに空いているという不思議なモチーフ。
「背骨のある、真ん中に芯のある、お酒をつくりたかったから」という森さんの気持ちが込められています。
強い気持ちを込めて醸す酒だから、口にする人の気持ちを揺さぶるのも当然なのかもしれません。
写真提供:株式会社瀬戸酒造店様